まちこのつぶやきグラフィティ No.18

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Posted on 7月 03, 2017

毎年この時期になると
イギリスのオックスフォード時代を思い起こして
胸がきゅんとなります。

二年間の学生生活で一番華やかで衝撃的な思い出が
6月の大学設立記念日に合わせて行われる
Commemoration Ball、言わば「記念舞踏会」です。

オックスフォード大学はそもそも39のカレッジから成り立ち、
毎年各カレッジが持ち回りでこの舞踏会を開きます。

カップルで参加するのが条件。
それも男性は燕尾服かタキシード、
女性はロングドレスというフォーマルで、夜通しダンスが続きます。

 
ダンスパーティ
 

それこそこの舞踏会に出られることが
大きなステータスなのですね。
半年くらい前から私たち女子大生の間では「誰と行くか?」
三か月前になると「何を着ていくか?」
そして一か月前には「ダンスはきちんと踊れるか?」が
常に話題に上ります。

ボールを二か月前に控えたある夜のことです。
参加のために即席ボーイフレンドを見つけようと
頑張ってきた女子三人が、そろそろそれもダメだと
あきらめてひそかに集まりました。

「ねぇ、もう男性抜きにして、最後の手段に出ましょう。
これしかないわよ」
演劇をこよなく愛していたジャッキーが口火を切ります。

実は、この舞踏会の参加資格は、オックスフォード大学学生の
カップルと銘打っているものの、特例があるのです。

何か人を喜ばせる芸ができるエンターテナーなら参加可能
チラシに小さく書かれたその一文に、三人の目はくぎ付け。
もちろんボール事務局の厳しい審査を通らなければなりません。
しかしながら負け犬だけにはなりたくないと、大きな賭けに出ました。

そして、舞踏会の当日、夕方からたくさんのカップルが
カレッジ内を賑わせています。
肩まで空いた豪奢なドレスを着こなす女性たちを
巧みにエスコートする男性たち。

あら~!いつもの学生達はそこにはいません。
目の前に繰り広げられる光景は、
古き良きイギリスの上流社会そのものです。

幼いころ憧れた「風と共に去りぬ」の舞踏会を見るようで、
何度も何度もため息をつきました。
由緒あるカレッジの講堂はダンスルームとなり、
音楽が庭まで漏れ聞こえてきます。

一方、緑深いキャンパスにはテントがいくつも点在しています。
ワインや軽食のストールのほかに
「エンターテイメント用のテントが並んでいました。

その一つが私たち三人組でした。
そうなのです。見事に賭けに勝ちました!
ジャッキーのおかげで、
私は東洋から来たFortune teller(占い師)となって
そのテントの中央に座る。ジャッキーともう一人の友人リズは
受付でお金をいただく係です。

冗談半分で応募したらすんなり通った…。
それからがタイへンでした。
日本にいる母から占いや手相の本を数冊送ってもらい、
すべて読破した私。

当日はオックスファムという古着屋さんで購入した
赤いチャイニーズドレスと扇を身に付けて、用意万端です。

最初はドキドキ、戸惑っていたものの、
なんと来る人来る人概ね同じ悩みだと気が付きました。

「卒業したら今目指している企業で成功するか?」
「今一緒にいるこの彼女や彼と将来もうまくいくか?」
ありゃ~!これは楽ちん。
「うまくいくのもいかないのもあなた次第ね。人間関係に気を配ってね」
と仕事の将来についてアドバイスし、
「うん、お互いの努力がキーね」などとカップルを前に言い出すと
「wow Great! Thank you !」と必ずや称賛の返答が来るのです。

「マチコォ!列がどんどん伸びてるぅ!」と叫んで
列の整理にいそしんでいるリズと
「お金、たまってるわよぉ!」と嬉々としているジャッキー。
結局店じまいは午前3時でした。

なあんと300人以上を集客した人気ストールでしたが、
気が付けば、私たち三人は食事もダンスも全くしないままで、
幕を閉じたのでした。

それでもこのお金で後日飲んだビールが
格段においしかったのを今でも忘れません。

あの長い一晩は今までの6月の中で飛び切りの思い出となっています
ちなみにジャッキーは演劇のプロデューサーになり、
リズは弁護士となりました。
6月のオックスフォード、なかなか味のある季節ですよ。